この建物は、京都市中京区の昔ながらの商業地の中に位置する。
京都の町並みが続く周辺地域はミニ開発の波と共に、地域性がなくなりつつある。その中で周辺環境に対していかに関係してゆくか、そして時間の経過と共に変化する街並みとの共生を試みた。

敷地は、南北に走る6m道路に対し西側に接道する間口10m、奥行き15mの敷地である。1階は金属加工の工場と事務所を、2、3階は住居スペースを配置し、2階に玄関ホールと個室、3階をリビングとし、奥の既存建物とは2階ブリッジにより結ばれる。

構造体は、S-COURT同様1方向壁面による薄肉ラーメン構造であり9m×9mの平面は6mと3mのスパンで構成し、東西方向に大きく開くとともに、1階工場の天井高を3.8mとすることで多機能性を持たせている。

住居部分では、2階を玄関ホールとするため、二つの異なった階段が設けられ、それぞれの階段は上昇とともに空間の開放率が徐々に開け、3階のリビングに到着する。フラットスラブの天井を持つリビングは、北面を除き3方向を外部テラスに開放し、連続した白セメント混入パネルの床材と、大きくはね出したアルミルーバーの庇は太陽光を程よく制御し、その反射と陰影は時間と共に刻々と移り変わる京の街並みの風景に連続する。

ファサードは、東側外壁に設けられたアルミルーバーにより、東西方向の視覚制御となって機能し、夕暮れになり室内照明が点灯されると、垂直にのびた壁面とフラットスラブのもたらす明解な架構が姿をあらわし、アルミルーバーの意識は大きく減少され、外部に対して大きく開く事となる。