店舗と住宅の狭間、およそ住宅と呼ばれる建築物の中にあって、この狭い境界にギリギリ位置する建物は、環境や使い手に恵まれた条件になければ姿を見せることはないでしょう。
この敷地は大阪府泉佐野市に位置し、前方に見える阪神高速のシルエットは、水平方向にカーブを描きリンクータワー向かって流れていく、暮れゆく夕日と移り変わる風景を最大限取り入れた形となる。また前方の広大な公園はこの建物を長期間維持する事を約束している。 建物は5人家族の長男の結婚に伴い、母屋の西側駐車場に若夫婦のための新居を計画した。限られた敷地において、30度の角度を持つショートケーキのようなコンクリートの折紙は、1階には駐車場、玄関ホールと趣味室を配置、主階であるリビングを2階に配置した。 軒を低くし、水平方向に延びる開口部は、厚さ50cmのボイドスラブで屋根面を蔽い、東側テラスの開口へ風を流すことにより太平洋に面した地域の夏場対策としている。また、外部の視線を考慮しつつ、前方の広大な環境を最大限取込んで床面積以上のゆとりあるリビング空間をつくりだし、親子2世帯の大家族が集まるリビングを提案している。
限られた変形敷地において、新居のリビングをできるだけゆとりある空間にしたいと考えた。母屋に個室がたくさんあることから、二つの住宅の有効利用を考えて、新居のリビングを母屋の2階と同じ高さにし、ブリッジでつないで行き来できるようにした。今後、親世帯は子供たちの独立によって必要な空間が減ってくる。また長男夫婦は、家族の誕生や成長にともなって必要な個室が増えるだろう。各世帯が個室をうまく取り合うことで、ライフサイクルに応じて二世帯の境界を増減するシステムを提案している。